平安時代より伝わる物合わせの遊技に「貝合わせ」というがありますが、その貝を入れておく貝桶(かいおけ)を模様化したものです・・・付属のひもなどを配した優美な古典文様の一つです。
この黒留袖はお客様のご実家の土蔵に保管されていたそうで、解き洗いする前は、紅絹(もみ)が付いておりましたので、おそらく、戦前~大正時代頃のお着物ではないか?・・・と思われます。
豪華な刺繍に、金箔加工と絞り加工を組み合わせた、時代を感じさせない、とても立派な黒留袖です。
貝桶文様は婚礼の象徴で、二つが一対で描かれることが多く、優美な紐も一緒に描かれます。
橘(たちばな)文様は、理想郷にある蜜柑(みかん)の一種で、長寿と子宝に恵まれるとされています・・・桃の節句にも橘が飾られますね。
貝合わせ(かいあわせ)は、貝殻(かいがら)の色合いや形の美しさ、珍しさを競ったり、その貝を題材にした歌を詠んでその優劣を競い合ったりする貴族たちの遊びだったそうです。